多くの管楽器奏者の初舞台、吹奏楽コンクールでのキツイを超える感動
学校の部活動が、その楽器に触れるきっかけになったという管楽器奏者は
多いのではないでしょうか。
ピアノやバイオリンという幼児期から始める事が多い楽器と違い、
管楽器は10歳前後から始める事が適しているといわれます。
この事が小学校高学年、中学生という部活動を始める時に
選ばれる大きな理由になるのではないかと思います。
新学年となり新部員を迎え新チームで走り出すと
直ぐに多くの吹奏楽部では「夏の吹奏楽コンクール」に向けての練習が始まります。
1章
夏休みが始まると同時に行われる地区大会を突破して
次なる都道府県大会に駒を進められるよう、
また強豪校ともいわれる支部大会や全国大会常連校であるならば尚更のことです。
指揮者である顧問の先生、部長、各パートリーダーのもと、
皆一丸となって金賞と代表高校の切符を目指すのです。熱い熱い夏の始まりです。
大きなホールで伸びやかな音を響かせる事が出来るよう、
部室に閉じこもってばかりではなく運動場でのロングトーン。
合奏に向けてのパートリーダーのもとでのパート練習。
出来ていない箇所を取り出しての練習。
持ち帰って練習出来る楽器ならば自宅練習。
そうこんでなければ朝練や居残り練習。
そして指揮者のもとでの合奏。
もっと少人数で構成されるアンサンブル・コンクールや伴奏者と2人で出場する
ソロ・コンクールもあります。
しかし、吹奏楽コンクールといえばやはり夏休みから、
10月勝ち進んだ団体のみが出場できる全国大会を目指す「全日本吹奏楽コンクール」こそが
コンクールの王様ではないでしょうか。
2章
管楽器は自分の吐く息が音になり、音楽を作ります。
だからこそ体調、メンタルが音色に大きく影響されます。
無伴奏ソロで演奏される事もありますが、多くは伴奏者を伴います。
人とのアンサンブルが大切な楽器です。
なのでプロ、アマ問わず管楽器奏者たちは、
ピアノのような独奏楽器奏者に比べると協調性やコミニケーション能力に長けた方が
多く感じられます。
これは声楽家の方にもいえる事なのでしょうが、
自分の吐く息が音になるという楽器の特性にも影響されるのではないかと思います。
大きなステージで1つの目標に向かって進む。
時にぶつかり合うような事があっても誰も投げ出さず、
皆で同じ曲を今日も明日もと練習し続ける。
コンクールに向けての当たり前のように繰り返されるこのような事が、
管楽器奏者の協調性やコミニケーション能力を高めてくれるのかもしれません。
3章
吹奏楽部は文化部、管楽器奏者は室内で練習に励むインドアな人、
という印象をお持ちの方もいらっしゃる事でしょう。
しかし、管楽器を演奏するには腹式呼吸が必須。
長い息が吐けるように日々ロングトーンに励みます。
息を音にする為、良い音を出す為には体力も必要です。
スポーツ選手のように、上手くなる為に見えない努力を重ねます。
そしてコンクールという晴れ舞台に立つのです。
4章
私事ではありますが、支部大会常連のそこそこな強豪校と言われる中学で
吹奏楽部に在籍しておりました。
夏休みの全てをコンクールの為に費やした3年間でした。
3年生の地区大会の時、あまりの緊張からソロを担当しているSAXの同級生が
派手なリードミスをしてしまいました。
演奏が終わり舞台袖に来た時、彼は申し訳ないと泣いていました。
多分皆、彼のミスに凍るような気持ちになった事と思います。
「地区で落としてしまったら、どうしよう」と。
中学生の子どもだった私たちですが、誰1人として
彼を責めたり冷たい目を向ける者はいませんでした。
彼が熱心に選び、それを注意深く削ってこのコンクールの為の
とっておきのリードを用意していた事を知っていたから。
何よりも一緒に汗をかきながら暗くなるまで一瞬に練習を重ねてきた仲間だから。
多感な年頃の子どもたちに、
数字や目に見えるものではないもので優劣をつけることを
否定的な意見を持たれる方もいらっしゃると思います。
出場者たちは、頑張ってきた分だけのそれぞれのドラマを持っているはずです。
まとめ
管楽器奏者にとってコンクールとは、
日常では感じ得ない程の感動を得る、
魅力的な時間の共有ではないのでしょうか。