1970年代に公開されたカルト恋愛映画5選

今回は1970年代に公開された恋愛映画の中でも
特に有名なカルト作品を5選ほど選びました。

1970年代、ベトナム戦争を経てハリウッドをはじめとした映画業界は低迷期を迎え、
以前のような超大作が作られない時代に入っていました。

そんな中、人々の関心を集めたのは低予算の恋愛映画やヒューマンドラマでした。

しかも、その内容は明るいハッピーエンドの恋愛映画とは一線を博す恋愛の
辛く悲しい現実を真正面から描いた作品が多く、こういった作品たちは現在でも
多くのファンからの支持を集めています。

今回は、そんな混迷と芸術の1970年代にあだ花を咲かせた
数多くのカルト的恋愛映画をご紹介します。

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実はとんでもない恋愛映画「小さな恋のメロディ」

1971年にイギリスで制作・公開された恋愛映画「小さな恋のメロディ」は、
当時イギリスでは大コケするものの、日本やアルゼンチンといった諸外国などで
高く評価されたカルト的映画の一作となっています。

本作のあらすじはイギリスに住む中流階級の少年マークがバレエの練習生である
少女メロディに恋をしたことで起こる騒動を描いております。

少年といっても、中学生以下の小学生で、本当に子供同士の恋愛を描いた
作品である本作はその独自のほんわかとしたファンタジックな世界観が
多くの観客に受けました。

と書くと、まるで「ひと夏の恋」的なイメージを想像されますが、
実は本作はかなりとんでもない作品になっています。

最終的に本作は主人公のマークとメロディが結婚して駆け落ちすることで終わりますが、
当然小学生同士がいきなり結婚して駆け落ちをしても生活ができるわけがありません。

恐らくあの後二人は自宅に帰り、黒歴史的な思い出になっているかもしれません。

また、本作の主人公マークは純朴な少年とは言い難いかなり危険な性格をしており、
爆弾の製作に長けており、大人たちをかく乱させるために爆弾をしかけ爆破させるなどと
将来が不安になる危うい一面をもっています。

親の物を平気で売り飛ばしたり、父親の読んでいた新聞を平気で燃やすなど
倫理観が若干危うい所があります。

これはいたずら好きでは済まされないほどの危険人物です。

これには、1970年代当時最盛期を迎えていたベトナム戦争反戦運動が大きく影響しており、

その当時の若者の共通認識であった「30以下は信用をするな
というメッセージが暗にこもっていたのではないかといわれています。

一応本作の監督はワリス・フセイン氏であるといわれていますが、
脚本や第二班の監督を務めていたのは後にハリウッドにわたり、

「ミッドナイト・エクスプレス」「エンゼルハート」「ケロッグ博士」
「ミシシッピーバーニング」など数多くのサスペンス映画やホラー映画などで、
カルト作品を生んだアラン・パーカーであり、
実際にはこのパーカーの作品ではないかともいわれています。

人を愛することの苦しさを描いた「早春」


1970年にイギリスと西ドイツの共同制作で描かれた恋愛映画「早春」は
1970年代を代表する極めて暗く悲しい恋愛映画として有名です。

また本作は、ポーランドが生んだ映画界の巨星イエジー・スコリモフスキがうんだ
カルト的映画としても知られており、あの映画評論家町山智浩氏がオススメをする
映画としても知られています。

本作のあらすじは高校を卒業した少年マイクが、公営プールの監視員として就職。

そこで先輩社員であったスーザンのお世話になることとなり、
マイクはスーザンに恋をすることになります。

しかし、スーザンはマイクのことなど気にしておらず、時々性的にからかったり
構うそぶりを見せるものの基本的には子供とあしらわれてしまいます。

そんなスーザンにマイクは心の奥底から惹かれほぼストーカー状態になります。

実はスーザンには実は、婚約者と浮気相手がいました。

彼女は婚約者からたびたび性行為をせがまれ、浮気相手の男性は結婚しており、
彼女との縁を切りたがっていました。

そんなマイクはスーザンの弱みを握り、一緒に裸でプールで泳ごうと提案しますが、
スーザンはこれを拒絶。

何をやっても拒絶してばかりのスーザンにキレてしまった彼は照明を投げてしまい、
スーザンはプールの中に沈み死亡します。

自分のやらかしてしまったことの恐ろしさを知ったマイクはスーザンとともに
プールの中へ入り、彼の死を暗示させることで映画は終了します。

なんと、痴情のもつれのケンカの結果、主人公もヒロインも死んでしまうという
後味が悪すぎる形で本作は終了します。

一応いっておきますが、本作のマイクは美少年で、プールのバイト中に
年上の女性に性的ないたずらを受けたり、元同級生の女性から恋焦がれていたりと、
実はスーザンの事を気に留めなければいくらでもまっとうな女性と関係を
築けるチャンスがありました。

しかし、そんなマイクはスーザンに恋い焦がれ彼女を求めすぎるあまり、
身を破滅させることとなりました。

実はマイクは、スーザンに一瞬「ママ」というシーンがあり、
マザコンの気がある男性でした。

そんな彼はスーザンを愛してしまったことで、
彼女に無意識的に母親を求めていたのでした。

しかし、スーザンは男性に「頼りがい」を求める性格で、
あまり男性の言いなりになったりそれこそ「ママ」になることを
拒絶する女性であったりします。

本作は恋愛をすることの辛さを描いた現実的な恋愛映画で、
現在でも多くのファンを持つ1970年代を代表する恋愛映画の一つとなっています。

老婆と少年の恋を描いた問題作「ハロルドとモート」


1971年に製作された「ハロルドとモート」は、なんと老婆少年の恋愛を描いた禁断の
恋愛映画となっています。

主人公のハロルドは裕福な家庭で育ったものの性格が変わっており、
趣味は狂言自殺であったり葬式を鑑賞する事であったり、
母からプレゼントされたジャガーを霊柩車に変えるなど、死に魅せられていました。

ハロルドはいつものように他人の葬式を鑑賞していると、
同じ趣味をしていた老婆のモートと出会い、恋に落ちます。

19歳のハロルドと79歳のモート、二人は魂で結ばれた関係をはぐくみハロルドは
モートに結婚を求めるほどの仲になります。

モートもハロルドを愛していました、しかし…ハロルドの将来を想い、モートは自殺。

ハロルドはモートの死を悲しみ、改造した霊柩車で自殺を慣行しますが途中で失敗。

大破する車から抜けるとモートからもらったバンジョーを手に、
演奏をしながらぼちぼちと歩いていきます。

その姿は、すっかり成長した一人前の大人の男になっていたのでした。

ということで、本作はキテレツな設定ながらも実は王道の恋愛映画で、
死に魅せられた少年を自分の死をもって、真人間に変える老婆の愛が勝つという
観方によればハッピーエンドにもなりえる作品となっています。

こういったことから、本作は非常にカルト的人気があり、
現在では日本でも舞台化されるなど一定数の人気を保っております。

美少年に恋をした老人の悲劇「ベニスに死す」


1971年に製作された映画「ベニスに死す」は現在でも、
語り継がれている名作恋愛映画です。

原作は、トーマス・マンにより生み出された同名小説で、
本作はその映画化作品となっています。

そんな本作は、ドイツからイタリアの街ベニスにやってきた老作曲家が
同じく観光でやってきたポーランド人一家の息子の美少年タジオに一目ぼれしたことで、
とんでもない悲劇を彼が襲うという内容になっています。

原作小説ではイタリアの街にコレラが発生していたという設定ですが、
映画のなかで病原菌は明言されていないながらも、奇病が流行っていることが
言及されていました。

作曲家の男は、イタリアから出るようにと周囲の人間に言われますが、
タジオがいる以上イタリアから離れないと譲りませんでした。

彼は若作りの恰好をしてタジオにあいにいきますが、その道中でなんと奇病に感染、
息を引き取ってしまうのでした。

そんな男をタジオは微動だにしない表情でみつめ、
イタリアを去っていくのでした。

主人公の老人は、決して同性愛者ではなく過去に娘がいたことなどから、
異性愛者であったことがわかります。

そんな老人を一瞬で恋に落とさせたタジオは、どこか人間を超越したむしろ
悪魔的ともいえる魔性の魅力を持った少年として描かれます。

本作のタジオはなんと「新世紀エヴァンゲリオン」の渚カヲルの造形に
強く影響を与えたといわれています。

また本作でタジオを演じたのは、ビョルン・アンドレセンという俳優で、
長らく俳優として表舞台に立つことはありませんでしたが…

2019年に製作された「ミッドサマー」に突如出演、現役復帰を果たしました。

実はアンドレセンは、本作で描かれたセックスアピール的立ち位置にウンザリしていたり、

本作の撮影にあたり製作者側からセクハラを受けており、
そのことがトラウマとなっていたことが後にドキュメンタリー映画で明かされました。

本作に出演したキャストの人生にも悪い意味で影響を与えたということは、
ある意味では本作は呪われた作品といってもいいのかもしれません。

あの日本の有名恋愛映画の元ネタ「ある愛の詩」


1970年にアメリカで製作された映画「ある愛の詩」は
1970年代を代表する恋愛映画の一つとして高い人気を集めています。

本作は大富豪の元で生まれた上流階級の男性と、
身分違いの少女が恋愛し結婚をするものの、とんでもない現実が二人を
襲う悲劇を描いた悲恋的な恋愛映画となっています。

主人公の大学生オリバーは、ホッケー選手として活躍していましたが、
ある日図書館でプライドの高い女性ジェニーと出会います。

ジェニーはオリバーとは別の大学の学生でした。

オリバーはそんなジェニーに興味を覚え、二人は付き合うこととなりました。

オリバーとジェニーは心底愛し合い、結婚を模索しますが、
オリバーの父であったシニアからの反対にあってしまいました。

しかし、オリバーは父からの反対を押し切ると強制的に結婚。

元々オリバーは父が嫌いだったのです。

二人は幸せな同居生活を送りますが、
ある日何とジェニーが病気にかかったことを知ります。

それは何と白血病、当初医者からオリバーにのみ明かされていましたが、
ジェニーも実はその事実を知っていました。

ジェニーは残された時間をオリバーと過ごしたいと語ると、
二人はそのまま結婚生活を続行。

しかし、今の生活では苦しいことから、
絶縁状態にあった父にオリバーは金を借りに行くなど無茶な事をし始めます。

そして、とうとうジェニーはこの世を去りました。

ウワサをききつけたオリバーの父はジェニーの病室を訪ねますが、
見送ったオリバーに「彼女は死んだ」と告げられショックを受けます。

そして去り際に父に言います。

「愛とは後悔しないことだ。」

皮肉にもジェニーの死が、親子の和解につながっていったのでした。

彼はジェニーと過ごしたホッケー場に向かっていきました。

そこで二人の思い出に浸るオリバー。

果たして彼は何を思うのでしょうか。

というのが本作のあらすじです。

このような悲恋に満ちた本作、この映画は後に「世界の中心で愛をさけぶ」等に
影響を大きく与えることとなりましたが、あちらと比べるとリアリズムがあり、
やや突き放したような態度で主人公を描くのが印象的となっています。

本作は、1970年代を代表する恋愛映画として現在でも高い人気を受け、
いわゆる「難病モノ」のハシリとして、語り継がれています。

まとめ

今回は1970年代の恋愛映画として、様々な作品をご紹介しました。

・「小さな恋のメロディ」は青春恋愛映画にみせかけてヤバい主人公が暴走する1970年代特有の政治背景が絡んだ名作
・「早春」は、年上の女性に轢かれた少年の悲劇を描いた名作
・「ハロルドとモート」は現在でも、舞台劇になり高い人気を博す名作
・「ベニスに死す」は、同名原作小説を映画化した名作、主演俳優がセクハラ被害を訴えたことでも有名
・「ある愛の詩」は悲しい悲恋を描いた名作ラブストーリー映画で、「世界の中心で愛をさけぶ」に影響を与えた

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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