【必読】ミステリでありホラー。貴志祐介の「天使の囀り」「新世界より」の見どころを語る!

貴志祐介はSF、ホラー作家と思っている人は多いのでは。

しかし実際は、SFやホラー大賞を受賞しながら、
吉川英治文学新人賞や山田風太郎賞の候補にあがるなど、SF、
ホラーの枠にとどまらない文学作品を書ける作家なんです。

げんに今回取り上げる「天使の囀り」は2008年に日本SF大賞を受賞したあと、
2009年に吉川英治文学新人賞の候補に挙がっています。

アニメ、ドラマ、映画など映像化された作品も多い貴志祐介。

天使の囀り」は漫画に、「新世界より」は漫画、アニメにもなっています。

またミステリー「鍵のかかった部屋」は、嵐・大野智を主演に迎えドラマ化。

青の炎」は蜷川幸雄が監督し、やはり嵐の二宮和也主演で映画化されるなど、
視覚に訴える文章の書き手でもあるのです。

今回取り上げる「天使の囀り」は450ページ弱、
新世界より」は400字詰め原稿用紙で2千枚近くあり読み応えのある小説。

けれど、それを再び読み返したいと思わせる深いものがある両作品。

人物と状況設定の緻密さ。練りあがった想像を超えるストーリー。

京都大学を卒業した貴志祐介の、知性と明晰さが光ります。

読みごたえ満点で、ミステリの香り漂うホラーの代表作「天使の囀り」、
「新世界より」について、語ってみたいと思います。どうぞお付き合いください!

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●「天使の囀り」、その衝撃の展開!


「天使の囀り」の主人公は、ホスピスでターミナルケアを行う医師・北島早苗。

恋人・高梨はアマゾン探検から帰国後、性格が変わってしまいます。
何より大きな変化は、これまで恐れていた『死』に対する恐怖心がなくなったこと。

さらに鳥がさえずるような、“天使の囀り”が聞こえると言い出し、
一体アマゾンで何があったのだろう?と知りたくなりますね。

その後、自殺した高梨。

死の真相を知りたいと、早苗の調査が始まります。

そして突き止めた原因は、特殊な寄生虫。

高梨はブラジルで寄生されていたのです!
寄生虫というものに接することがない身としては、その描写がただただ不気味…。

早苗が訪ねた寄生虫の権威と言われる依田によると、
その寄生虫には脳を操作する力があり、自殺に導くというのです。殺人寄生虫ですね!

その頃、不審な自殺が日本中で報告されるようになってきます。

彼らの共通点が、あるセミナーに参加したことだと気づいた早苗。

セミナー会場に行って見たものは…寄生虫により無残な姿となり死んでいたたくさんの死体だったのです。

その描写が余りにリアルで、まるでどこかで見てきたの?と思うほど。

貴志祐介の描写力に圧倒されます。

早苗と依田は寄生虫をせん滅しようと施設に火をつけますが、
その時依田も寄生されてしまい後に自殺してしまうのですね。

悲惨な展開ながら、早苗ならきっと決着をつけられると希望を残して終わる物語。

寄生虫が感染するかもしれないと主人公たちが恐怖を感じるシーンでは、
昨今のコロナウイルスに襲われた世界が思い出されます。

壮絶な展開なのに、最後まで追求し続けた早苗の奮闘のおかげか、
読み終わった後なぜかスッキリしたものが残る物語。

ただ怖いだけのホラーで終わらない
「天使の囀り」のすごさをあなたにもぜひ感じて欲しいものです。

●「新世界より」壮大なSFの世界


「新世界より」は今から1000年後の日本が舞台。

『呪力』という超能力を身につけた人類の物語です。
『呪力』と聞いて、今大人気のアニメを思い出した人もいるのでは?

主人公・渡辺早季の手記という形を取り、
文庫では12歳、14歳、26歳の時期で分けられた3部作となっています。

初めから呪力があるわけでなく、発現してから、学校でその力を使う訓練をする主人公たち。

そこも某アニメや、イギリスの魔法使いの物語が思い出されますね。

早季たちが住んでいる場所では色々なタブーがあるのですが、
早季と仲間たちは、呪力によって文明が崩壊したという禁断の歴史を知ってしまいます。

知った罰に、せっかく発現した呪力は封印されてしまい、
そこから早季たちの苦難の冒険が始まるのです。

「風船犬」「袋牛」「バケネズミ」など奇妙な生き物が次々登場し、
ページをめくるのがもどかしいほどの面白さを味わえます。

そして最後の最後に分かる、衝撃の事実。

架空の世界なのに、その場所や、登場する異形の生き物たちの匂いまで漂ってくるような細やかな描写。

深く物語世界に沈んでしまうような読後感

長大な作品なのに文章はすらすらと読める。

貴志祐介の作家力に舌を巻いた作品です。

●ホラーでも、SFでも、読んだ後に残る深い余韻

ミステリーとして読み進んでいるうちに、極めつけのホラー描写に行きつく「天使の囀り」。

未来世界の設定に、SFと思って読み進むとミステリーであり、ファンタジーであり、
活劇である「新世界より」。

ジャンルの壁を超える、濃厚で贅沢な面白さを味わえる、ある意味お得な二作品。

どちらも情景描写、登場人物の心象風景が細かく書き込まれているおかげで、
決して架空の物語に思えません。

読み進むうち、どんどん物語世界に入り込んでいく快感をぜひ味わって頂きたいです。

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●まとめ

謎の自殺の原因が寄生虫だったという、恐怖と衝撃の物語「天使の囀り」。

1000年後の東京と、支配する呪力を持つ人間たちを描いた壮大なSFファンタジー「新世界より」。

架空の世界なのに、違和感なく受け入れられるのは、
隅々まで緻密に構成された物語のおかげでしょう。

読み手に優しい、丁寧でシンプルな文章。

それこそ貴志祐介の作品が、幅広い年代から支持される理由かもしれません。

呪力を持つに至った人間たちの物語もいつか描くかもしれない、と言っていた貴志祐介。

それに備えて、読んだことのある人ももう一度「新世界より」を読み返してみては?
「天使の囀り」「新世界より」。

どちらを読んでも日常を離れて、架空の世界にトリップできる。

ストレスもちょっと軽くなるかもですよ!

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