【小説】90年代は女性作家が活躍!女の内側をさられだすオススメ3冊
90年代とはどんな時代だったのでしょうか。
バブルが崩壊して経済が低迷し「失われた10年」と呼ばれました。
スーパーファミコンが発売され、若者の間ではポケットベル、ルーズソックスが大流行。
たまごっちブームなんて、今の20代は知らないでしょうね。
音楽はCDが全盛期でした。そんな時代の空気の中、どんな小説が誕生したのでしょうか。
90年代の小説というと、女性作家の活躍が目覚ましかったのではないでしょうか。
たくさんいる女性作家の中から、山田詠美、吉本ばなな、多和田葉子の3名をご紹介しましょう。
彼女たちが描く女性は、
一筋縄にはいきません。だからこそ魅力的で愛おしいのです。
⚫︎少女から女性へと羽ばたいていく『蝶々の纏足』
山田詠美の小説を読んだことはありますでしょうか?
私にとって彼女の小説は、ピンク色をしたカクテルです。
そのカクテルは甘やかで肉感的。スルスル飲むように読めてしまいます。
読み終わるころには、うっとり酔いしれてしまうのです。
まだ私が少女だったころ、山田詠美の小説をドキドキしながら読んで、
酔いしれたものです。まだお酒も知らないくせに。
山田詠美の少女たちの物語をご紹介しましょう。
1997年に出版された『蝶々の纏足』。主人公は瞳美という少女。
幼馴染である、えり子の束縛から逃れるため、男を愛します。
少女から女性へと羽ばたいていく複雑な心情を、美しく詩的な文章で描かれています。
なんと言っても少女たちの描写がいい。
共感したり、できなかったり。瞳美が愛する男も登場しますが、
言うなれば、瞳美とえり子のラブストーリーなのでしょう。
⚫︎『とかげ』みたいな女に癒されて
吉本ばななの小説が大好きです。どこか神秘的で、癒しが流れています。
私は幾度となく、吉本ばななの小説に救われて来ました。
一小節目で涙したこともあります。
もし、あなたの心が疲れているのなら、ぜひ読んでみてください。
本の処方箋のように、優しい気持ちを取り戻すことが出来るでしょう。
『とかげ』は1993年に出版された、
吉本ばななの短編小説です。
精神科医の彼と、癒しの力を持つ鍼灸師の彼女「とかげ」の物語。
彼のプロポーズに対して、長い沈黙の後、とかげは「秘密があるの」と打ち明けます。
それぞれが持つ暗く悲しい過去。二人に落ちる影が、
お互いを引き寄せ合ったのでしょう。
痛みがあるからこそ、淡々と静かに綴られる、癒しのストーリー。
⚫︎芥川賞受賞作『犬婿入り』
90年代に活躍し、今なお素晴らしい作品を生みつづける、
日本が誇る女性作家がいます。多和田葉子です。ここでご紹介するのは、
第108回芥川賞受賞作の『犬婿入り』。
ふつうの小説では物足りない人には、ぜひ読んで欲しい一冊です。
『犬婿入り』はこんな話。“キタムラ塾”の愛称で子供たちに人気の学習塾。
先生は北村みつこ。みつこが子供たちに「犬婿入り」の話をすると、変な男が現れます。
二人が一緒に暮らすようになると、次々に奇妙なことが起こります。
とにかく変な話で、時折、笑ってしまいます。ただ、どこか哀しみが漂っているのです。
あらすじだけでも変なのに、読んでみたら、さらに驚く。
冒頭の一文の長さに、度肝を抜かれることでしょう。
どこで息継ぎをすれば良いのか分からない。
これまで良しとされていた小説の固定概念を打ち砕きますよ。小説って自由なんですね。
⚫︎まとめ
今回は、3人の女性作家の90年代の小説をご紹介しました。
共通していることは、女性が女性を描いていることです。
瞳美、えり子、とかげ、みつこ、全員どこかおかしい。
屈折していて、それが魅力的に思えます。女なんて、ただの綺麗なものではないです。
お化粧して、素敵なお洋服を身に纏っていても、
誰だって内側に奇妙な部分を隠し持っているものです。
90年代の女性作家たちは、
それを堂々とさらけ出してくれました。ああ、自由!小説は、なんて自由なのでしょう!