【ネタバレ考察】『東京mer』椿という男・・・・テロ行為の目的やその後は??
「TOKYO MER~走る緊急救命室~」は石田ゆり子さん演じる東京都理事勅命で
新設された最新の医療設備搭載のmerカーで救命活動を行う東京merの活躍を描く医療ドラマです。
人命救助という勇敢で尊い仕事をしているにも関わらず、
彼らの活動には様々な指示系統の異なる権力がたち塞がり、妨害やけん制をしてきます。
しかし、彼らの命がけのひたむきな行動と
現場での迷いない判断力や行動を目の当たりにするうちに、次第と心動かされ、
だんだんと敵対していた組織も彼らに協力をし、ともに人命救助をしていくのです。
敵だと思った組織にもそれぞれの正義があり、本当の悪人ではないのだ、
というとても心を打つ描写はこのドラマの人気の理由のひとつです。
今回はそんな「TOKYO MER~走る緊急救命室~」の中で唯一稀代の悪人ともいわれる
ダークキャラクターであるテロリストの城田優演じる「エリオット・椿」に注目してみました。
●エリオット椿と喜多見との関係について
在米日本人であった喜多見幸太は、幼い頃に遭遇した銃の乱射事件により両親を亡くしました。
その際に声をあげても、パニック状態となった現場では誰も両親の命を救ってはくれなかった。
その後、喜多見は死に際に母親から託された幼い妹と身を寄せ合いつつ、
同じような思いをもう誰にもさせたくはないと、国際医療機関の医師団に所属し、
中南米などの治安の悪い国で医療活動をしていた。
一方、エリオット椿は国際的テロ組織「lasting・peace9(LP9)」で活動するテロリストであった。
テロリストになった目的は不明なのだが、「lasting・peace9」のlasting・peace が
恒久的平和、9が憲法9条に由来するのでは、という考察もあります。
そして、二人とあるテロ攻撃の現場で出会います。
自爆的攻撃の際に負傷してしまったエリオット椿を、喜多見は治療し、命を救うのです。
しかしエリオット椿は「私を助けたことを必ず後悔させる」と告げると
病院からいなくなってしまいます。
喜多見はテロリストを救助した上で、故意に逃がした疑いをかけられ、
逮捕されて1年間拘留されしまったのでした。
のちに、当時その事件を追っていたジャーナリストだった赤塚が都知事となり喜多見を
東京merに指名するまでの、喜多見の経歴における「空白の1年間」は
ドラマ序盤から伏線として語られていました。
●椿の復讐
喜多見は東京merのリーダーとして手腕を発揮し、どんな事故現場や重篤な患者が相手であってもあきらめず、
常に患者やチームに前向きに指示を出し精力的に活動を続けていた。
妹涼香も成長し、今では喜多見の身の回りの世話をしながら院内で保育の仕事をしながら
東京merのメンバーの癒し的存在になっていた。
しかしエリオット椿は「助けたことを必ず後悔させる」ために徐々に喜多見の近くに接近していた。
そしてついに喜多見のもとへ向かう涼香に水筒と偽った爆弾を手渡し爆破の巻き添えにさせました。
東京merの賢明な救命措置もむなしく、涼香は命を落とします。
危機管理対策室では初めて「死者1名」の報告が悲しく響くのでした。
エリオット椿はかつて喜多見によってテロリストとして
任務をまっとうする事を阻まれ命まで救われてしまった事を屈辱に思っていたため、
喜多見の一番大事なものを奪うことで自分を助けた事を後悔させたかったのです。
そして、さらに次の攻撃をしかけるのです。
●憎しみと信念
稲森いずみ演じる公安の月島はテロ対策本部にてエリオットを追っている中、
喜多見の空白の1年について調査していました。
そしてエリオットと喜多見がつながっていると疑い東京merの周辺をマークしていたのです。
エリオット椿は天沼大臣の汚職事件に絡めた脅迫をすることで
捜査本部を攪乱させつつ東京merが所属する東京海浜病院で薬物テロと同時に時限爆弾テロを起こします。
最初は喜多見を疑っていた月島は最終的にエリオットの本当の目的に気が付き、
エリオットの誘導に騙されたふりをした陽動作戦により、
見事爆破の寸前でエリオット椿を射撃し、最悪の事態を阻止しました。
ところその後再び、喜多見はエリオット椿を助けるのです。
涼香を殺された怒りと悲しみを抑えきれない音羽をはじめとするmerメンバーを静かに悟し、
それでも目の前にある命を助けたいとメスを持つのでした。
「どんな命でも救う」という信念のもと
分け隔てなく人助けをする喜多見に対しての、エリオット椿の歪んだ憎悪。
憎しみを憎しみで返す事をせず。さらに高い信念で目の前の命を平等に扱う喜多見との対比により、
喜多見の全身からこみ上げる悲しみが視聴者に伝わりました。
またしても命を救われた椿はその後月島たちに逮捕されますが、
本人はいまや失うものもなく、また国際テロ組織も撲滅したわけではありません。
世界の悲しい紛争やテロ行為はなくならない、不幸な事件や事故は繰り返され、
それでもそのたびに東京merはそこにある命を救っていくのだろう、
という事を予感させるようなラストシーンでした。
●さいごに
ところで、ドラマ本編ではエリオット椿の生い立ちやテロリストになった理由などは
ほとんどで明かされていませんでした。
最終回を終えた後のネットの口コミでは「個人的な恨みだけであんな卑劣な行為をするなんて」
といった意見が多数みられました。
確かに国際的テロ組織にしては政治・宗教的な大義名分というよりは
喜多見に対する劣等感ともとれる逆恨み行為に終始した気がします。
ドラマ東京merがコロナ下の医療従事者にエールを送るという
裏テーマで制作されたという拝啓もあり、今後続編が放送されるにしても
エリオット椿とのエピソードはこれ以上掘り下げられないかもしれませんが、
個人的にはどうして彼があのような悲しい人物になってしまったのか、非常に興味があります。
エリオット椿のその後や過去のエピソードを掘り下げたスピンオフがあるのなら、
是非見てみたいと思います。